日経平均株価は、日本の株式市場を代表する指数として、ニュースや新聞でよく目にします。
しかし、その仕組みや意味について深く理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?
この記事では、日経平均株価の基礎知識をわかりやすく解説します。
日経平均株価の仕組みを理解することで、日本経済の現状を読み解くヒントが見えてくるはずです。
日経平均株価とは?
日経平均株価は日本の株式市場の代表的な指数であり、その元となる株価指数の算出は1950年9月7日に東京証券取引所によって始まり、当初は「東証株価平均」や「東証修正平均株価」と呼ばれていました。
1970年7月1日からは日本経済新聞社が算出を引き継ぎ、1985年5月1日に「日経平均株価」という名称に変更。
日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場に上場する代表的な225銘柄の株価平均を指数化したものであり、構成銘柄は時価総額やセクターバランス、流動性などを考慮して選定されます。
日経平均株価は2024年2月に過去最高値を更新して4万円台に
日経平均株価は、2024年2月22日に34年ぶりに最高値を更新し、同年3月4日には史上初めて40,000円を超えました。それまでの過去最高値は、1989年12月29日の38,915円でした。
しかし、「平成バブル」が弾けた後に日経平均株価は低迷し、2008年のリーマンショック時には6,994.90円まで下落。
しかし、2012年12月に始まった「アベノミクス」相場以降は上昇傾向が続き、2024年には4万円の大台を突破したのです。
このように、日経平均株価は長い歴史の中で日本経済の動きを反映し、重要な指標として確立されてきました。
日経平均株価の構成銘柄は、東証プライム市場の時価総額上位銘柄を基本に、セクターバランスや流動性なども考慮して選定されます。
採用銘柄は、日本を代表する大企業から中堅企業まで幅広く含まれており、日本経済の縮図とも言えるでしょう。
日経平均株価の過去の上昇幅・下落幅
日経平均株価は4万円近くになり、1日で1,000円前後動くことも珍しくありません。
それでは、過去の値動きはどうだったのでしょうか。
出典:日経プロフィル
日経平均株価の下落幅1位(-3,836.48円)は、1987年10月20日でした。
この日の前日には、米国で「ブラックマンデー」が起こりました。
ブラックマンデーは、1987年10月19日(月)にニューヨーク株式市場で発生した株価の大暴落です。
ダウ工業株30種平均は、終値で先週末比508ドル下落し、値下がり率は22.6%に達しました。
この暴落は世界中に波及し、日本を含む世界的な株安を招いたのです。
ただ、ブラックマンデーの翌日、日経平均株価は2,037円高(9.30%上昇)を記録し、当時の上昇幅1位の記録でした(現在は2位)。
そして、日経平均株価は半年後に下落分を回復。すでに進行中だったバブル景気に拍車をかけ、1989年12月に史上最高値を記録することになります。
日経平均株価の算出方法
日経平均株価は、単に225銘柄の株価を合計し平均したものではありません。
株価の高い特定の銘柄(値がさ株)の影響が過大にならないよう、2022年10月の定期見直しから「ウエートキャップ」が設定されました。
各銘柄のウエート(構成比率)は最大12%に制限され、そのキャップ水準は2023年10月に11%、2024年10月以降は10%と段階的に引き下げられる予定です。
また、日経平均株価への寄与度は、ある期間における日経平均株価の変動のうち、各構成銘柄の値動きがどの程度影響したかを示します。
株価の高い銘柄ほど日経平均株価への寄与度が大きくなるため、株式投資を行う際は、寄与度上位の銘柄を把握しておくことが大切です。
ただ、日経平均株価の算出方法やウエートキャップの設定は、投資家にとって公平かつ適切な指標となるよう設計されています。
株式投資に際しては、日経平均株価の仕組みを理解し、寄与度の高い銘柄の動向にも注目することで、より効果的な投資判断ができるでしょう。
日経平均株価のウエートの高い銘柄(2024年4月30日時点)
コード | 社名 | 業種 | セクター | ウエート |
---|---|---|---|---|
9983 | ファーストリテイリング | 小売業 | 消費 | 10.61% |
8035 | 東京エレクトロン | 電気機器 | 技術 | 8.97% |
9984 | ソフトバンクグループ | 通信 | 技術 | 4.04% |
6857 | アドバンテスト | 電気機器 | 技術 | 3.40% |
4063 | 信越化学工業 | 化学 | 素材 | 2.64% |
9433 | KDDI | 通信 | 技術 | 2.25% |
6954 | ファナック | 電気機器 | 技術 | 1.97% |
6367 | ダイキン工業 | 機械 | 資本財・その他 | 1.85% |
4543 | テルモ | 精密機器 | 技術 | 1.83% |
6762 | TDK | 電気機器 | 技術 | 1.81% |
構成銘柄の選定基準と入れ替え
日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場に上場する225銘柄で構成される株価指数です。
この225銘柄は、「継続性」と「産業構造変化の反映」を両立しながら、市場流動性の高い銘柄で構成されるよう、定期的に見直されています。
構成銘柄の入れ替えは、年2回(4月・10月)の「定期見直し」と、上場廃止などによる欠員補充のための「臨時入れ替え」によって行われます。
定期見直しでは、「高流動性銘柄群(東証プライム市場で市場流動性上位450銘柄)」を選定し、①市場流動性低下による除外、②流動性極めて高い銘柄の採用、③セクターバランスを考慮した採用・除外、の手順で225銘柄を選定するのです。
臨時入れ替えでは、整理銘柄指定や上場廃止などの事由により除外された銘柄を、原則として同一セクターの高流動性銘柄から補充します。
このように、日経平均株価は定期的な見直しと臨時の入れ替えにより、常に時代に即した日本を代表する優良企業で構成されるよう維持されているのです
日経平均株価とTOPIXの違い
正式名称 | 日経平均株価 | 東証株価指数 |
---|---|---|
略称 | 日経平均、日経225 | TOPIX |
算出・公表元 | 日本経済新聞社 | 東京証券取引所 |
対象銘柄数 | 225銘柄(東証プライム市場から選定) | 2,148(2024年3月末時点) |
計算方法 | 採用銘柄の株価平均 | 時価総額加重平均 |
基準日 | 1949年5月16日 | 1968年1月4日 |
影響を受けやすい銘柄 | 株価の高い銘柄 (値がさ株) | 時価総額の大きい銘柄(大型株) |
銘柄入れ替え | 年2回(4月、10月)の定期見直し | [継続] 市場に関わらず市場編成前の構成銘柄は継続採用 [新規] プライム市場に新規上場する銘柄 |
TOPIX(東証株価指数)は、東京証券取引所が算出・公表する指数で、日本の株式市場ほぼ全体の資産価値の動きを表します。
1968年1月4日の東証一部の時価総額を基準(=100)とし、現在の構成銘柄の相対的な価値を示します。
算出方法は、「浮動株時価総額加重平均方式」で、大株主以外の株主が保有する「浮動株」の時価総額を加重平均します。
東証の市場再編に伴い、TOPIX構成銘柄は段階的に見直され、現在はスタンダード市場やグロース市場の銘柄も含みます。
しかし、プライム市場の上場維持要件を満たさない銘柄は、段階的にウエートが低減され、2025年1月に除外される予定です。
TOPIXのウエートの高い銘柄(2024年3月末現在)
コード | 社名 | 業種 | ウエート |
---|---|---|---|
7203 | トヨタ自動車 | 輸送用機器 | 5.32% |
8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 銀行業 | 2.39% |
6758 | ソニーグループ | 電気機器 | 2.35% |
8035 | 東京エレクトロン | 電気機器 | 2.14% |
8058 | 三菱商事 | 卸売業 | 1.81% |
6861 | キーエンス | 電気機器 | 1.78% |
6501 | 日立製作所 | 電気機器 | 1.72% |
8316 | 三井住友フィナンシャルグループ | 銀行業 | 1.59% |
4063 | 信越化学工業 | 化学 | 1.51% |
8031 | 三井物産 | 卸売業 | 1.44% |
TOPIXは日経平均株価と並び、日本経済の動向を示す代表的な経済指標であり、ETF(上場投資信託)や投資信託のベンチマークとしても利用されています。
TOPIXは、日本の株式市場の動向を把握する上で重要な指標であり、多くの投資家が注目しているからです。
NT倍率とは
日経平均株価とTOPIXの値動きの差を示す「NT倍率」は、株式市場全体の方向性を把握する指標で、計算式は以下の通りです。
- NT倍率=日経平均株価÷東証株価指数
日経平均株価は値がさ株の影響を受けやすく、TOPIXは時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすいという特徴があります。
NT倍率が上昇すると、日経平均株価がTOPIXに対して相対的に強いことを示しているのです。
足元ではNT倍率の上昇が注目されており、「日経平均株価は買われ過ぎ」「TOPIXは出遅れ過ぎ」との見方もあります。
日経平均株価とTOPIXは、日本経済の動向を示す重要な指標ですが、それぞれに特徴があります。
日経平均株価は代表的な225銘柄の平均株価であり、値がさ株の影響を受けやすい一方、TOPIXは時価総額加重平均のため、時価総額の大きい銘柄や業種の影響を強く受けます。
両指数の特徴を理解することで、投資の参考になるのです。
日経平均株価の注意点
日経平均株価はシンプルな指数であるがゆえに限界もあります。
まず、構成銘柄数が225銘柄と限定的であることが挙げられます。
東証プライム市場には1,650銘柄が(5月2日時点)上場しているため、日経平均株価はその一部を反映しているに過ぎません。
また、日経平均株価は値がさ株の影響を受けやすいという特徴があります。
構成銘柄の中で株価が高い銘柄の値動きが、指数全体に大きな影響を与えてしまうのです。
この点は、時価総額加重平均であるTOPIXとは異なります。
さらに、日経平均株価は業種のバランスを考慮して銘柄が選定されますが、ハイテク株など特定の業種の影響を受けやすいという側面もあります。
株式取引で日経平均株価を活用するには
株式取引をするときに、日経平均株価をどのように活用できるか、その戦略と注意点を解説していきます。
日経平均株価を活用する際のポイントは、以下の通りです。
1. 長期的な視点を持つ
日経平均株価は短期的には様々な経済指標やニュースに影響され変動しますが、長期的には日本経済の成長とともに上昇傾向を示してきました。
そのため、日々の値動きに一喜一憂せず、月次や年次での動きに注目しましょう。
日本経済の全体像を把握し、投資の参考とするツールとして活用するようにしてください。
2. 経済イベントや企業業績に注目する
日経平均株価の動きだけを見るのではなく、その背景にある経済イベントや企業業績の変化にも目を向けましょう。
例えば、米国などの海外市場の動向、為替レートの変化、金利政策、政治的な出来事などが株価に影響を与えることがあります。
また、日経平均株価を構成する225銘柄のうち、ファーストリテイリングや東京エレクトロン、ソフトバンクなど影響力の大きい企業の動向にも注目しましょう。
3. インデックスファンドやETF(上場投資信託)を活用する
投資初心者の方が手軽に分散投資を行うには、インデックスファンドやETF(上場投資信託)がおすすめです。
日経平均株価に連動する成績を目指すインデックスファンドもあり、225銘柄に幅広く投資できるため、個別企業のリスクを抑えられます。
ETFも同様に日経平均株価に連動する投資信託で、株式のように取引所で売買でき、手軽に始めやすいというメリットがあります。
4. 積立投資で中長期的な資産形成を目指す
投資にはリスクが伴うため、中長期的な資産形成を目指す場合、インデックスファンドやETFを毎月一定額購入する積立投資がおすすめです。
値動きに関わらず定期的に購入することで、平均購入単価を下げる効果が期待できます。
積立投資するときは、非課税制度であるNISAを利用するようにしましょう。
5. リスク管理を徹底する
投資信託やETFは分散投資によりリスクを軽減できますが、それでも市場全体の下落時には値下がりします。
また、先物やCFD(差金決済取引)を利用して日経平均株価を取引できますが、レバレッジを効かせられる分、ハイリスク・ハイリターンの取引です。
投資金額が元本割れする可能性も十分理解した上で、自己責任で取引するようにしてください。
まとめ
日経平均株価は、日本の株式市場を理解するための重要な指標です。
その仕組みや特徴を知ることで、日本経済の現状や将来の見通しを分析する手がかりを得ることができます。
しかし、日経平均株価にも限界があることを忘れてはいけません。
それは、日経平均株価は東証プライム市場上場企業の一部で構成される株価指数であり、日本経済全体を完全に反映しているわけではないからです。他の経済指標も合わせて活用し、多角的に分析することが大切です。
投資初心者の方は、日経平均株価を長期的な視点でとらえることをおすすめします。
短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、日本経済の成長を信じ、インデックスファンドやETFなどを活用して着実に資産形成を進めていくようにしましょう。