米株高騰の中心的存在である半導体領域は今後どうなるのか

最近の株式相場に興味を持つ皆様なら、エヌビディア(NVIDIA)社という名前は聞いたことがあることでしょう。
名前は知っていても、何を主力としている会社かご存知でしょうか。
エヌビディアはアメリカのカリフォルニア州サンタクララにある半導体の企業です。
半導体のなかでGPU(グラフィックス処理ユニット)の分野で急速な成長を遂げ、これまで40,000社以上の企業がエヌビディアのAI技術を導入しています。

半導体と聞くと製造立国である日本人はパソコンをつける溶接のイメージを持ちます。印象として間違えてはいません。
ただ最近の半導体は、世界を大きく変えるであろう最新技術に活用されています。
目ざとい株式市場の参加者は、半導体領域の活況と考え、2024年に関連各社の株価は著しく伸長しました。

エヌビディアの高騰

2024年5月22日、同社は2024年2-4月の決算を発表し、純利益が前年同期比で約7.3倍となる148億8,100万ドル(約2兆3,300億円)、売上高は約3.6倍の260億4,400万円に到達し、ともに過去最高を記録しました。

エヌビディア株価

引用:Yahoo ファイナンス https://finance.yahoo.co.jp/quote/NVDA/chart

上記グラフを見ると、2024年年明けからの短期間で2.5倍から3倍に上昇していることがわかります。
それまでも揉み合いなく右肩上がりでしたが、特に2024年に入ってからの伸びが顕著です。
2024年を通して好調な米株ですが、そのなかでも先頭を争う上昇基調といえるでしょう。

生成AIの学習と推論

エヌビディアは半導体銘柄として注目されていますが、事業主力は生成AIのバックデータといえます。
2024年はChatGPTやGemini(Google社)が注目され、社会的インフラとして認知されるほど、エヌビディアの存在価値も比例して高まっています。

この「社会的インフラ」が重要です。生成AIは世界を変える力を持つというのはもはや共通認識です。
ただ現時点で生成AIが顧客対応に実装されたり、翻訳者や通訳の代わりになったりというニュースは聞きません(実務上は既にあるかもしれませんが、世界的に浸透しているという意味です)。

そう考えると、エヌビディアの株価は期待値の部分も大きいと感じられます。
実際に2024年初頭は「エヌビディアは高値だが、ほかの半導体銘柄は高騰していない」という専門家の解説も目立ちました。

2024年に入りその傾向に変化が生じます。
2024年春ごろから、アメリカにおいて半導体全体が上昇しはじめました。これはアメリカ市場に限った話ではなく、日本にも影響し始めたものと考えられます。
日本においては台湾の企業が熊本に工場を建設したり、北海道に国内集合体による企業が誘致されています。特定の国に影響せずに、活況さの見えた半導体が株式市場でも勢いをつけたという分析ができるでしょう。

では半導体はどうなるのでしょうか。
当面は生成AIによる期待値で、高騰が続くでしょう。その後は落ち着いてしまうのでしょうか。
筆者は、ある社会的インフラが実装されることで、半導体市場は更なる活況を迎えると考えています。それは、自動車の自動運転です。

自動運転実現で半導体は更なる活況相場へ

対応主体レベル技術レベル
ドライバーレベル0運転者が運転操作をすべて行う。
レベル1システムが前後または左右の車両を制御
レベル2システムが前後かつ左右の車両を制御
システムレベル3システムがすべての運転操作を実施
(システムからの要請があればドライバーはいつでも運転に戻ることができる)
レベル4高度運転自動化
(限定された条件下でドライバーは運転席を離れる)
レベル5完全運転自動化(ドライバー不要)
引用:各種資料から筆者作成

自動運転は現在、上記表のレベル3からレベル4の入口に到達していると見られています。
例えるなら「未来の自動車」から、「近い将来には誰もが利用できる社会インフラ」といえる状況です。
生成AIにとって、自動運転ははじめての社会的インフラ候補なのです。

2024年春、日産自動車が将来的に市場に投入するモデルを発表しました。
なんと、運転席と助手席が前を向いておらず、後部座席と対面で座ることができます。
あと10年もすれば、我々の財布から運転免許証は消え、自動車による移動時間はパソコンを持ち込んでの作業時間か、仲間との会話の時間に様変わりしているのかもしれません

自動運転のどの部分に半導体が関わるのか

このあたりを、もう少し深掘りして見ていきましょう。

〇画像解析におけるAI

自動運転では、車両に搭載されたカメラやミリ波データなど各種センサーが映し出すデータを分析し、運転制御をします。このときに映し出されたデータに対して、ひとつずつ名前をつけて分類・区別していく作業(ラベリング)が必要になります。自動車が移すのは周辺環境だけではなく、車線や各種の道路標識、信号機などのあらゆる情報です。
あらかじめこれらの情報を判別した自動車は、人の力を借りることなく自動車を走らせられるという仕組みです。

〇判断におけるAI

これらの情報をもとに進行する自動車制御もAIが主導します。車両が区画をはみ出しそうになったら横方向の制御、信号機が赤であれば縦方向の制御という具合です。歩行者の飛び出しも制御し、事故の発生を防ぎます。

〇予測におけるAI

これらは臨床的なその場の対応だけではなく、予測することも期待されています。人が飛び出してきそう、渋滞が発生しそう(だから段階的に減速する)といった動きもAIが認識します。また実際に自動車を走らせると、許容範囲内で法定速度を超えている車がほとんどです。このあたりも今後のAIは学習し、円滑に走行することで渋滞発生を防ぎます。「人間が運転しているのと何も変わらない状況」を実現していきます。

このような未来図を書いていると、とてもワクワクします。
自動運転車が進めば、既にご紹介した日産自動車のように、乗車する人が特急のボックス列車のように対面に座り、懇談をしながら高速道路を走ることも可能になるでしょう。これが社会的インフラの実現であり、半導体の更なる高騰が期待できる要因です。

自動運転以外の期待は何か

自動運転に特化しただけでも、これだけの期待値を生成AIは実現することができます。そして、これは自動車に限った話ではありません。

書類や画像の作成

もっとも生成AIが得意とすると考えられているのが、文章の作成です。
生成AIは既に何度もアップデートされていますが、現段階のもので充分に社会的インフラになるレベルのものが提供されています。

本記事で最初に紹介した「エヌビディアって何が凄いのか」を、生成AIの代表格であるChatGPTに聞いてみましょう。

引用:ChatGPT https://chatgpt.com/c/b3aca57f-d1a3-4d5f-95b3-486691eff3ee

この文章が10秒かからずに出てきます。
国語辞典や百科事典を調べて手書きで文章を作成していたのは、わずか40年ほど前までの話です。
インターネットの登場により環境は大きく変わり、いま次の段階として、「頭脳」が人工知能によって代替されようとしています。
40年前の人にこの状況を見せると、間違いなくひっくり返ったことでしょう。

今後、ビジネスやプライベートにおける意思疎通は人工知能が作った文章をベースにしていくでしょう。
膨大なバックデータから作成したものは、人間の知見に頼るよりも確実性が高いためです。
またAIはどれだけ作業しても、疲れることがありません。24時間一定の効率を維持することができます。

ChatGPT4oにて動画にも展開

2024年に開発が報告されたChatGPT4o(フォーオー)は、文章のバックデータとなっている部分を応用して、瞬時に動画を作成することができます。「sora」と命名されたサービスは一般公開前ながらも、その革新性に観客は言葉を失いました。

(soraにて発表されたAIが作成した動画※引用元で動画を確認できます)

引用:OpenAI sora  https://openai.com/index/sora/

soraがあれば誰でも動画編集をすることができるため、現在専門的な会社が担う動画作成や、ショートムービーなどは代替される可能性が高いです。

また動画を文章から文章を自動作成することができるため、会議の映像から議事録を作成することも容易いです。
前項にてお伝えした自動運転に比べれば、このあたりは既に実務に導入できる精度のサービスが完成していると見受けられます。

感情を含めた人とのやり取り

そのひとつがカスタマーセンターやコールセンターです。電話口の向こうの声に十分なホスピタリティを維持しながら、顧客対応を実現します。
かつ最新情報を常にアップデートするため、いわゆる研修などの必要はありません。

この分野で生成AIに期待されているのがクレーム対応です。
カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉が浸透しても、無理な要求をするお客?は無くなりません。理不尽な要求に身体を壊す事例も報告されており、早急に対策が求められる部分です。

最新の生成AIでは、満足な対応ができる充分な会話力が実現できます。
日本企業のコールセンターに外国の方が母国語で問い合わせても、瞬時に言語を切り替え、対応することが可能です。
この領域は、大きく様変わりすることでしょう。

なかには追随できない半導体企業も

ネガティブな視点はないのでしょうか。
筆者は、生成AIの活況と「半導体」の評価には乖離がある点がとても気になっています。
つまり、生成AI分野において発展性が見込めないと相場に判断された半導体企業は、周りに引っ張られることで伸びてきた株価が打ち止めになる可能性があるという点です。
半導体として株価がもみ合っていながらも、決算レポートを見ると生成AIがまったく関係ないという会社は、期待値で長期ホールドをするのは避けた方がいいかもしれません。

アドバンテスト社のような企業を探す

そこで注目したいのがアドバンテスト社のような企業です。
エヌビディアとも多くの取引がありますが、東京証券取引所に上場している日本の会社です。

同社は半導体検査装置(テスタ)の提供を主力事業としています。
従来、日本は精密な製造業が盛んで、半導体のテスタも高い需要がありました。2020年代に入り、日本が世界の需要を牽引してきたテレビやパソコンなどのハードに代わり、スマートフォン(スマホ)のモバイルが存在感を高めています。

モバイルを牽引しているのは台湾や韓国初の半導体企業です。
これらのなかにはテスタ提供も自分たちのグループ内で展開するならアドバンテスト社のような外部企業に成長は見込めません。

アドバンテスト社はスマホのあと、半導体の鍵を握る生成AIの企業のテスタ部門として存在感を示し、有望銘柄として認められています。

(2024年のアドバンテスト社の株価チャート)

出典:Yahooファイナンス https://finance.yahoo.co.jp/quote/6857.T/chart?trm=6m

同社のチャートを見ると、揉み合いながらも着実に株価を伸ばしていることがわかります。
半導体の商品が世に出るまでに何が必要かを踏まえ、銘柄を探していきましょう。
また個別株では無くても、半導体を含めた投資信託も成功可能性も高いものです。
ファンドが常に買うべき半導体銘柄と、そうではない銘柄を判別し、スクリーニングするためです。

まとめ

記事のなかで繰り返し触れましたが、半導体市場の将来の会議を握るのは間違いなく「生成AI」です。
生成AIが社会インフラとして確立されていないこということは、言い換えれば「今後社会インフラとして必要になる余地が大きい」と言い換えることができます。

半導体の需要が次のフェーズに移行したとき、なかには波に乗れずに評価されなくなる銘柄もあるでしょう。
それも含めて見ていくのが株式投資です。
引き続き活況の「次」を見通して、投資行動へと反映させていきましょう。

この記事を書いた人

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工藤 崇

FP-MYS代表取締役社長CEO。
相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発。上場企業を中心に多数の執筆のほか、早期相続のコンサルティングに代表される個人相談とFP関連の開発事業を中心に展開。
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