この記事を読み始めたみなさんは、日本株にどのような印象を持っているでしょうか。
配当が低く儲からないという方もいれば、堅実な投資対象というポジティブな見立てをされている方もいると思います。
「世界の先頭を走るアメリカの経済指標と大きな差がついた」と自虐しているあいだに、多くの方が初めて目にした日経平均40,000円の数字も話題となりました。
我々の生活とも縁の深い、日本株についての考察記事です。
日経平均38,000円の意味
2024年5月10日(執筆時)の日経平均は38,073円です。
まず、最近ニュースで耳にすることの多くなった、日経平均の上がり幅を見てみましょう。
日経平均とは、日本経済新聞社が発表する株価指数のことです。
東証(東京証券所)に上場している銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されます。
日本の株価の総合的な状況を判断する指標になるほか、日経平均に連動してチャートが推移する投資信託や先物取引があります。
こちらが2024年5月現在時点で採用されている225銘柄です。いわゆる「大企業」といわれる会社ばかりです。
日本の代表的な銘柄を選定して指標としているため、定期的に組入れ銘柄の見直しが行われています。
参照:日本経済新聞社
日経平均の上昇は「バブル」ではないのか
現在の日経平均がきわめて好調なのは理解できます。
そこで気になるのは、1990年にあったバブル崩壊の再来ではないかという視点です。
投資初心者が「いまは日本株が高いぞ!」と買いに入り、再びバブル崩壊が発生した際には、大きな損失を被りました。
結論を急ぐと、2024年現在の状況はバブルでは無い、と見る専門家が多いです。
1990年当時のバブルは、株価は不動産の地価がぐんぐんと上がり、先物買いでピークを迎えたあと、国や日銀の金融引き締めで崩壊の引き金になりました。
1993年の株式価値総額は、1989年末の株価の59%まで落ち込んだと記録されています。今回の株高は、各企業の好決算に裏付けされているものです。
バブル崩壊のあと、日本は長い不況に悩まされました。
メディアで「失われた20年」という言葉を聞いた方も多いでしょう。
この30年はバブル崩壊前後を起点として、2010年初頭までを定義する言葉です。
浮き沈みこそありましたが、今日に続く日経平均株価の上昇は、日本企業が再び元気になっていく様と連動しています。
日本株の売り方と買い方
今回も日銀は長いマイナス金利政策のあと、ゼロ金利まで戻し、更には利上げを示唆していますが、バブル崩壊を引き起こさない優先順位が高いように見えます。
ただ気になるのは都市部を中心とした不動産価格の高騰と為替です。ドル高円安は日本株には下落要因とされており、反発圧力も強まっているためです。
当時のように社会がひっくり返るバブル崩壊はないものの、根拠なく日本株の上昇がいつまでも続くものではないという考え方を土台としましょう。
米国株の記事でもお伝えしましたが、「日本株」という銘柄はありません。
日経平均株価やTOPIX(日経平均と同じく日本株の趨勢を示す指標)はありますが、日経平均が上昇した日に著しく下落する銘柄もあります。
これは個別株も、投資信託も同じです。
各社の決算(通期・四半期)や、今後世の中において需要が高まっていく銘柄を見通して株を購入し、また下がる前に売却するという基本的な姿勢が大切になります。
同時に短期売買に寄り過ぎず、長期的に銘柄の需要を見通すことで、日本株を使った資産形成を実現することができるでしょう。
日経平均株価を受けてお勧めの銘柄
ではもう少し掘り下げて、いわゆる領域別の日本株として注目の銘柄を考えていきましょう。
チャート的な動きによる推奨銘柄や、円安基調の為替が「円高になったら買い」という推奨はリスクも高いため回避します。
経済発展の国で人気の自動車メーカー
たとえば自動車メーカーのスズキ(7269)です。
日本では軽自動車のイメージが強いですが、インドでは4輪のシェア4割を独占しています。株価も安定していることに加え、インドはまだ地方格差が大きい国家です。
都市部のスズキのニーズが地方に波及すれば、信頼度を獲得したスズキの需要はまだ伸びると考えられるでしょう。
引用:Yahoo ファイナンス
日銀の利上げは誰得?
ゼロ金利に戻した日銀ですが、今後利上げを示唆しています。
日銀は利上げをすると金融機関も顧客・企業向けの利率を上昇させるため、金融機関にとっては収益増のメリットがあります。
マイナス金利撤廃の動きが表面化した頃から、日本最大の金融機関である三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)などは、チャートも上昇基調が続いています。
ただ、利上げによる景気減速が大きいと景気指標も悪くなるため、金融機関によってはネガティブな要素となります。特に銀行株はひとつの面だけではなく、複数の視点から見ていきましょう。
引用:Yahoo ファイナンス
世界一のエンタメ企業を目指す
最後は社会的な知名度は低いものの、世界一のエンタメ企業を目指し積極的なM&Aを仕掛けるGENDA(ジェンダ:9166)です。
アーケードゲームのシェアを伸ばしているほか、オンラインアーケードゲームというこれからの領域に展開しています。2024年に入り株価は低迷しておりますが、次に向けての仕掛けと考えると、注目企業のひとつといえるでしょう。
引用:Yahoo ファイナンス
日本社会の課題をどう考えるか
株価は好調ですが、日本社会は成長曲線に乗っているわけではありません。
もっとも危惧されているのが、少子高齢化です。
現在、1年間における日本の平均出生数は約70万人であり、死亡者数は約130万人です。つまり、1年に60万人が減少している計算となります。
ひとつの都市における人口が減少しているものではないため、目に見えない部分が大きいです。
ただ、これだけ人口が減っている以上、これまでの産業にとっては規模縮小となるものも多いでしょう。
「日本株は〇〇が強い」という長所が今後も継続的なものかを常に思案していくことが大切です。
日本株の基本形(米国投信+個別株もしくはヘッジファンド)
基本形として米国株の記事では「インデックス投信+基本株」として、eMAXISの米国株式やオール・カントリーを紹介しました。
日本株も同じように、と言いたいところですが、利回りなどを考えると、投信は米国投信がお勧めでしょう。米国株の記事でご紹介した米株のインデックス投信はこちらです。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
「S&P500インデックスマザーファンド」への投資を通じて、主にインデックスに採用されている米国の株式に投資を行います。
ベンチマークはアメリカの指標であるS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)です。
原則、為替ヘッジは行いません。投資初心者の方が購入するインデックスファンドの代表格といえるでしょう。
eMAXIS 全世界株式(オール・カントリー)
外国株式、新興国株式、日本株式の3つのマザーファンドを通じて、日本を含む先進国および新興国の株式に投資します。こちらも原則、為替ヘッジは行いません。
これら米株インデックスを軸として6:4もしくは7:3で日本株の個別株や、日本向けのヘッジファンドを購入する考え方があります。
購入を検討したいヘッジファンドとは、私募形式の投資信託です。株式のみならず、債券や為替、デリバティブ(金融派生商品)などと組み合わせることもあります。
日本株向けのヘッジファンドとして著名なのが、レオスキャピタルワークスの「ひふみプラス」です。
では、ひふみプラスの2024年5月現在の組入銘柄を見ていきましょう。
トヨタ自動車や第一生命などの有名企業のなかで注目したいのは、③のM&A総研ホールディングスです。
日本は後継者不足による事業売却が目下の課題となっており、売り手と買い手を繋げる仲介会社です。
このような株に注目するのも、日本株の特徴といえるでしょう。
金などコモディティと組み合わせる
株式以外に、金などのコモディティと組み合わせる方法もあります。
特に金は急激に伸びており、株式投資で突発的に値が下がる際のリスクヘッジとして適役の資産です。
投資信託や先物で購入するのもひとつですが、日本は買取業者が乱立しており、インゴット(金の延べ棒)を買い取ってくれるサービスも数多くあります。
2024年の日本株について
バブルと今日を比較した項でも触れましたが、土地や株式への先行投資ではなく、あくまで実業績にもとづいた日本株の躍進は今後も暫く続くでしょう。
業績不振や突発的な事故などで下落する銘柄を避けられれば、資産形成に大きく寄与すると考えられます。
資産ポートフォリオにおいて外国株と日本株を混合でポートフォリオを組んでいる方は(投資信託を含む)、日本株の割合を増やすことも検討しましょう。
日銀の利上げはいつか(そもそも実施されるのか)
2024年の日本株を考えるときに、大きなポイントとなるのが日銀による利上げです。
2024年3月、日銀はマイナス金利を撤廃し、同時にYCC(イールド・カーブ・コントロール)などの諸政策を終了させました。
次のポイントとされるのが金利の設定です。
アメリカの金利は約5%であり、日米差は長く指摘されています。利上げの有無も含めて、株価への影響を注視していきましょう。
ドル高円安と株価
政策金利とも関わりますが、1ドル153円(2024年5月執筆時点)のドル高円安も大きな注目点です。
為替と株価の状況を理解できているのでしょうか。
現在のようなドル高円安になれば、輸出産業が恩恵を受けます。
1ドル100円の時よりも、1ドル150円の方が1ドルで受け取る円が大きいためです。
よく混乱しますが、「1ドルの価値が150円=1ドルを受け取るために100円ではなく、150円『も』必要」なので円安」です。
一方で内需・輸入型企業はドル安円高になれば、支払うコストが低下するため、円高を好みます。
輸入型企業の電力・ガス・化学・紙パルプなどは円高を歓迎します。
2024年5月、トヨタ自動車は営業利益5兆円の最新決算を発表しました。
本業が好調な点はもちろん、円安も後押しとなった決算といえるでしょう。
先にご紹介したヘッジファンドも、トヨタへの投資を推進しています。
参考:読売新聞オンライン
日経平均4万円手前でいったん落ち着きか
経済メディアなどで多い意見は、2024年年明けにスタートした新NISA(次回の記事で詳報します)も落ち着き、いったん過熱感が覚める展開になるのではというものです。
具体的に注目される個別株はありますが、マクロ視点でみたときに、「利下げが次の成長スタートだから利下げを早く!」と息まいている米国市場とは異なり、次の展開を見定めている印象を持ちます。
日本経済と関係の深い中国も、いっときの不動産バブル崩壊から復活してきているという指摘があります。
コロナが明けて諸外国からの観光客も再び急増傾向になり、株式相場だけではなく実体経済への影響も期待されます。
これから各社の通期決算発表が活発化します。日常生活とも距離の近い日本株に期待しながら、資産形成を展開していきましょう。