米国株投資のリスクと対策完全ガイド~リスクを抑えて高リターンを狙う方法

近年、米国株投資が日本でも人気を集めています。グローバル企業への投資機会や、為替差益の獲得チャンスなどが魅力だからです。
しかし、米国株投資には為替や価格変動などのリスクが伴います。円高ドル安になれば、ドルベースの含み益があっても円換算では損失になる可能性があります。
また、株価は需給や企業業績、経済情勢などによって変動するため、元本割れのリスクもあるので注意が必要です。

本記事では、米国株投資におけるリスクについて詳しく解説し、それぞれのリスクへの対策を解説します。米国株投資に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

米国株投資の為替変動リスクと対策

近年、米国株投資が日本で人気を集めている理由は、グローバル企業への投資機会や為替差益の獲得チャンスなどがあります。
しかし、米国株投資には為替変動リスクが伴います。
円高ドル安になると、ドルベースの含み益があっても円換算では損失になる可能性があるからです。

例えば、1ドル100円の時に1株100ドルで購入した米国株が、1ドル90円の時に1株110ドルになったとします。ドルベースでは10%の含み益ですが、円換算すると9,900円(110ドル×90円)となり、円ベースでは1%の含み損となるのです。
このように為替変動リスクが米国株投資において大きな影響を与えることは避けられません。

このリスクに対処するための方法の一つとして、為替ヘッジがあります。
為替ヘッジとは、為替予約取引などで為替リスクを回避する手法です。
例えば、1ドル100円で米国株を購入し、同時に1ドル100円で1年後の米ドル売り予約を行うと、1年後の為替レートが90円に下落しても、100円で米ドルを売却できるため、為替差損を避けられます
ただし、ヘッジコストがかかるデメリットもありますので、コストとリスクのバランスを見極めることが重要です。

為替レートは、経済状況や政治的事象、金融政策などの影響を受けて日々変動しています。
これらの要因を正確に予測することは難しいため、短期的な為替変動を予測することは非常に困難です。

しかし、長期的に見ると、為替レートは一定の範囲内で上下に変動する傾向があります。
つまり、円高と円安が交互に繰り返される傾向にあるのです。
これは、各国の経済状況や金融政策が長期的には平均化されるためです。

したがって、短期の為替変動に一喜一憂せず、長期保有を心がけることが大切です。
さらに、投資タイミングを分散させることで、為替リスクを平準化できます。
具体的には、ドルコスト平均法などの定期購入が有効です。
毎月一定額を米国株に投資することで、円高時には割安な株価で購入でき、円安時には割高な株価の影響を抑えられます。

米国株投資には為替変動リスクが避けられない一方で、適切な対策を講じることでその影響を最小限に抑えることができます。
為替ヘッジや長期・分散投資を駆使し、リスクを管理しながら米国株投資を進めることが重要です。
これにより、グローバル企業の成長を享受しながら、安定した資産形成を目指すことができるでしょう。

米国株投資の価格変動リスクと対策

米国株投資において、価格変動リスクも避けられない要素ですが、適切な対策を講じることでその影響を抑えることが可能です。
その一つの方法として、分散投資があります。
特定の銘柄に集中投資せず、国や業種、企業を分散させて投資することで、価格変動リスクを抑えられます。
例えば、S&P500やNASDAQ100などの米国株式インデックスに連動するETF(上場投資信託)に投資すれば、数百銘柄に分散投資できます。
また、セクターETFを活用し、景気循環の異なる業種に分散投資するのも有効です。

景気循環に合わせて業種配分を変更する投資手法を、「セクターローテーション」と呼びます。
例えば、景気回復期には素材や資本財セクターを多めに組み入れ、景気後退期には生活必需品セクターを多めに組み入れるなど、ポートフォリオ全体のリスク管理を意識し、特定のセクターや銘柄に偏らないことが、価格変動リスク抑制の鍵となります。

もう一つの対策として、長期投資が挙げられます。
株式投資は短期的には価格変動リスクが高いものの、長期的にはプラスリターンの確率が高いと言われています。
米国株の長期リターンを見ると、過去100年間で、年平均リターンは約10.6%でした(2024年4月末時点)。
短期的な値動きに惑わされず、長期保有を心がけることが大切です。
時間分散効果によって、リスクを抑えつつリターンの獲得を狙うことができます。
例えば、毎月一定額を積立投資することで、高値掴みのリスクを抑え、平均取得単価を引き下げられます。
長期投資では、複利効果も魅力です。

仮に年利5%のリターンを複利で30年間運用すると、単利では元本の2.5倍に対し、複利では元本の約4.3倍にもなります。
時間を味方につけることで、リスクを抑えつつ資産を着実に増やすことが可能です。

※筆者作成

また、投資対象の見極めも重要です。
投資対象企業の財務内容や業績、成長性などをしっかりと分析することで、価格変動リスクを抑えることができます。
割安な銘柄を選ぶバリュー投資の視点も大切です。PERやPBRが低く、利益成長の持続性が高い銘柄は、割安度が高いと判断されます。
また、配当利回りの高い銘柄も魅力的です。配当金は株価変動に左右されにくいため、株価下落局面でもインカムゲインが期待できます。「配当貴族」と呼ばれる、25年以上連続増配している銘柄などは、業績安定性が高く、投資リスクを抑えられる可能性があります。

そしてS&P500指数構成銘柄の中から、連続増配25年以上、時価総額30億米ドル以上のハードルをクリアした銘柄を厳選して構成された「S&P500配当貴族指数」があります。
各銘柄のウェイトは均等投資(3ヵ月毎にリバランス)で、構成銘柄は年1回見直されます。
S&P500配当貴族指数とS&P500、ナスダック総合指数の違いは、以下の通りです(2023年10月末時点)。

出典:野村アセットマネジメント

ただし、個別銘柄の分析には専門知識と時間が必要です。
投資初心者は、まずはETFなどの分散投資から始め、徐々に個別銘柄投資の比重を高めていくことをおすすめします。
ETFならば少額からでも分散投資が可能であり、個別銘柄に比べてリスクを分散させやすいです。
初心者にとって、まずは市場全体や特定のセクターに連動するインデックスファンドやETFを利用するようにしましょう。そこから徐々に個別銘柄に投資することで、リスクを抑えつつリターンを狙うことができます。

価格変動リスクを管理するためには、分散投資と長期投資の基本を押さえ、投資対象の見極めを行うことが不可欠です。
これにより、米国株投資におけるリスクを抑え、安定した資産形成を目指すことができます。
リスクを理解し、適切な対策を講じながら、米国株投資の魅力を最大限に活かしていきましょう。

米国株投資のその他のリスク

米国株投資のその他のリスクについて解説します。

値幅制限がない

日本株と米国株の大きな違いは、値幅制限の有無です。日本市場ではストップ高・ストップ安があり、1日の値幅は最大20%程度に制限されます。
一方、米国市場には値幅制限がなく、一夜にして株価が大きく変動する可能性があります。
このため、米国株投資では、日本株投資以上にリスク管理が重要となります。
具体的には、逆指値注文によるロスカット設定や、ポートフォリオによる銘柄分散などが有効です。

米国市場では、投資家が一夜にして大きな損失を被るリスクがあります。
十分なリスク管理を行い、資産を守ることが大切です。

信用リスク

信用リスクは、株式の発行企業の信用力が低下することで、株価が下落するリスクです。
経営状況や財務状況の変化、外部評価などが原因となります。
信用力を失った企業が倒産すると、保有中の株式の価値がゼロになる可能性があります。

流動性リスク

流動性リスクは、流動性の低い銘柄が希望価格で売却できない、または現金化できないリスクです。
知名度の低い銘柄は取引量が少ないため、流動性リスクを抱える可能性が高いです。
また、企業の不祥事などで上場が廃止される場合も流動性リスクが高まります。
流動性リスクが高い銘柄では、売りたい人と買いたい人のバランスが崩れ、売却が成立しにくくなります。

これらのリスクを理解し、適切なリスク管理を行うことが重要です。投資を検討する際には、これらの要因を考慮してポートフォリオを構築しましょう。

初心者におすすめの米国株投資法

米国株投資に挑戦したい初心者は、まずは少額から、S&P500連動のETFなどに投資することをおすすめします。
S&P500は米国の優良企業500社で構成される株価指数で、長期的に見れば年率10%程度のリターンが期待できます。
ETFなら少額から分散投資でき、株式と同様に値上がり益と配当金が得られるのです。

為替リスクを抑える方法

為替リスクを抑えたい場合は、為替ヘッジ型のETFやインデックスファンドも検討しましょう。
ただし、ヘッジコストがかかるため、長期投資では為替ヘッジなしの方が有利になる可能性もあります。
自身のリスク許容度に合わせて、為替ヘッジの要否を検討することが大切です。

長期・積立・分散投資の重要性

投資にあたっては、長期・積立・分散投資を意識しましょう。
一時的な価格変動に一喜一憂せず、コツコツと積み立てることが成功の秘訣です。
また、投資資金は生活に支障のない範囲に留め、無理のない資金計画を立てることが重要です。

投資初心者にとっては、個別銘柄よりもETFなどの分散投資がリスクを抑えた効果的な方法です。
市場全体や特定のセクターに連動するインデックスファンドを利用することで、リスクを分散させつつリターンを狙うことができます。
また、投資に必要な資金は生活に影響を与えない範囲で設定し、無理のない資金計画を立てるようにしましょう。

米国株投資は魅力的なリターンを期待できる一方で、為替変動や価格変動のリスクも伴います。
しかし、適切な対策を講じることで、これらのリスクを抑えつつ資産を増やすことが可能です。
初心者は長期・積立・分散投資を基本に、徐々に投資の知識と経験を積んでいくことが成功への近道となるでしょう。

米国株インデックス投資のリスク

米国株インデックス投資は、iDeCoや新NISAを使った資産形成方法として人気が高まっています。代表的なインデックス指数である「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」に連動する投資信託やETF(上場投資信託)への投資が一般的です。ただし、これらのインデックス投資にはリスクも存在します。

S&P500指数のリスク

「S&P500指数」は米国市場の500銘柄の時価総額加重平均で算出されますが、IT大手GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の寄与度が高く、これらの株価動向に大きく影響を受けます

また、S&P500は米国企業のみで構成されているため、米国経済や政治リスクに晒されやすくなります。
グローバル分散が図れないことが欠点です。

ダウ平均株価(NYダウ)のリスク

ダウ平均株価(NYダウ)は、構成銘柄がわずか30銘柄と少ないため、銘柄分散が十分ではありません。
そのため、特定の企業やセクターの影響を大きく受けるリスクがあります。
たとえば、構成銘柄の一部が業績不振や経済状況の変化により大幅に下落すると、指数全体が大きな影響を受ける可能性があります。
このため、分散投資を考える際には注意が必要です。

NASDAQ100指数のリスク

「NASDAQ100指数」はハイテク企業が多く含まれ、異次元のパフォーマンスを発揮していますが、GAFAMの寄与度が高く、バブルが懸念されています。
「レバナス」と呼ばれるレバレッジを掛けた投資は大きなリターンが期待できますが、その分リスクも大きいと言えます。

米国株インデックス投資は長期・積立・分散投資として合理的な方法ですが、各指数の特徴やリスクを理解した上で、自身の投資方針に合ったインデックスを選ぶことが大切です。

まとめ

米国株投資には為替変動と価格変動などのリスクがつきものですが、適切な対策を講じることでリスクをコントロールできます。
為替ヘッジや長期・分散投資で為替リスクに備え、投資対象の選定では企業の成長性や割安度を考えるようにしましょう。

初心者は少額からコツコツと、ETFなどを中心に投資することをおすすめします。
長期投資の視点を持ち、リスクを抑えつつリターンを目指すことが大切です。
米国株投資に挑戦し、グローバル企業の成長を自身の資産形成に活かしていきましょう

この記事を書いた人

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山下 耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社で営業、マーケットアナリスト、先物ディーラーを経て個人投資家/金融ライターに転身。
ライター歴6年、投資歴20年以上。保有資格は証券外務員一種。
マーケットアナリスト時代は、日経CNBCに出演。
そして、ディーラー時代は主に日経225先物・オプションを取引。現在は個人投資家として株式、先物、FX、CFDなどを取引している。
また、金融ライターとして、上場企業、金融機関などで年間300本以上の記事を書いている。